March 20, 2024

今日のAI分野に必要不可欠な高性能ストレージを解説

今日のAI分野に必要不可欠な高性能ストレージを解説

ウィリアム・チェン、エンタープライズマーケティング部長

進化し続ける人工知能(AI)および機械学習の分野では、データはイノベーションの原動力です。AIアルゴリズムが高度化して大量のデータを扱うようになると、高性能ストレージソリューションの必要性がますます高まります。これから、その理由をご紹介します。

AIにおける大量のデータ

AIアルゴリズムはデータによって成長しています。機械学習モデルのトレーニングデータ、深層学習ネットワークの膨大なデータセット、あるいは、AI搭載アプリケーションのリアルタイムデータなど、データに対する需要はとどまるところを知りません。しかし、この大量のデータは、課題を生み出しています。ごくわずかな時間のうちに、莫大な量の情報を効率的に保存し、アクセスし、処理する方法が求められているのです。

AI業務の最適化と処理能力

高性能でAI業務に最適化したストレージソリューションは、AIコンピューティング構築のための基盤になります。このようなシステムは、高速データアクセスおよび高速処理を提供しているので、AIタスクに必ず存在する複雑な計算や大量のデータセットの取り扱いに不可欠です。ニューラルネットワークのトレーニング、予測分析の実施、リアルタイムAIアプリケーションの実行など、いずれの場合でも、速度とデータアクセス効率が最優先事項です。

課題とイノベーション

AI分野で高性能ストレージを選定する際には、課題があります。速度、容量、コスト、データインテグリティのバランスを常に追求しなければなりません。しかし、NVMe、ゾーンネームスペース(Zoned Namespace)、フレキシブルデータ配置(Flexible Data Placement)など、ソリッドステートドライブ(SSD)テクノロジーの進歩に伴って、できることの範囲が拡大し続けています。

ストレージ業界のリーダーとしてのシリコン・モーションの取り組みをご紹介します。

明日のテクノロジーを今日に実現

シリコン・モーション・テクノロジー・コーポレーションは、ありきたりの半導体企業ではありません。このデジタル世界を形作る技術的進歩を推進する先駆者なのです。20年以上にわたる豊富な経験を通じて、シリコン・モーションは、常に最先端のソリューションを提供し、ストレージ分野に変革をもたらしてきました。

NANDフラッシュコントローラのリーダー

シリコン・モーションの成功は、NANDフラッシュコントローラに関する専門知識に裏付けられています。このコントローラは、高性能で大容量のソリッドステートストレージソリューションの根幹となるものです。当社の革新的なコントローラは、コンシューマエレクトロニクスからエンタープライズストレージシステムに至るまで、最適な性能と信頼性を維持しながら、さまざまな装置を稼働させています。

ストレージ業界のリーダーとしてのシリコン・モーションの取り組みをご紹介します。

イノベーションを中心に

シリコン・モーションを際立たせているものは、イノベーションに対するゆるぎない取り組みです。当社の技術的優位性への絶え間ない追求は、フラッシュメモリ管理、誤り訂正、データインテグリティの画期的な進歩につながり、より高速でより高効率なストレージソリューションへの道を開いています。

シリコン・モーションのエンタープライズクラスPCIe Gen5 MonTitan™ SSD開発プラットフォーム:

シリコン・モーションのMonTitan™は、最も能力の試されるデータセンターおよびエンタープライズSSDソリューションを対象とした、高性能でユーザープログラマブルなPCIe Gen5開発プラットフォームです。このプラットフォームは、量産対応可能なSM8366フラッシュコントローラASIC、ターンキーで多層的なエンタープライズファームウェア、SSDリファレンスデザインキットとあわせて提供しており、お客様の設計した商品を市場に投入するまでの期間を短縮し、総所有コスト(TCO)の最適化に貢献します。

クラス最高の性能、低消費電力、手厚いサポートを備えたMonTitan™は、現在のデータセンターの課題への対応に加えて、新しく登場したHPC、エッジ、AIアプリケーションにも最適です。

MonTitan™は、NVM Express 2.0bおよびOCP Data Center NVMe SSD 2.0仕様をサポートしており、E1.S(9.5/15/25 mm)、E3.S、U.2などの標準的フォームファクタで、消費電力と性能を最適化したファームウェアを備えています。

MonTitanの主要な差別化要素:

シリコン・モーション独自のPerformaShape™およびNANDCommand™テクノロジーを活用して、MonTitan™は、業界最高レベルのセキュリティを備え、優れた性能とQoSを実現しています。

PerformaShape™

PerformaShape™は、ファームウェアに配置されており、ユーザー定義のQoS設定をベースにSSDの性能を最適化する多段階シェーピングアルゴリズムです。真のハードウェアアイソレーションテクノロジーと組み合わせて、SM8366は、ユーザー定義の個別性能要素(QoS、レイテンシ、RR/RW、電力)を最大化すると同時に最大の帯域幅性能を実現します。

NANDCommand™

この最新のPCIe Gen5 x4 NVMe SSDコントローラは、第5世代LDPCエンジン、機械学習、包括的リアルタイムメディアスキャン、データ保持、エンデュランス拡張アルゴリズムを活用して、エンタープライズNANDの性能を最大化します。これらのアルゴリズムが、高性能ソフトデコード、マルチパスおよびマルチプレーン処理、スマートバッファ管理、きめ細かなリード/ライトパーティショニングと効率的に協調して、次世代の低レイテンシTLC/QLC NANDに最適化されたコマンドを実行します。

また、MonTitanは、次に説明する2つの重要なエンタープライズクラスの機能をサポートしており、最新QLC NANDに対応する完璧なプラットフォームとして、際立って優れた製品となっています。。

ゾーンネームスペース(ZNS)

ZNSは、NVMe 2.0仕様の一部です。ゾーンストレージ(Zoned Storage)という概念は、比較的最近開発されたものであり、ホストシステムとストレージデバイスが協力してストレージ容量を拡大する、ある種のストレージデバイス(HDDおよびSSD)のことです。その名前から想像できるように、ゾーンストレージは、ドライブをゾーンに分割して構成します。HDDの場合、ゾーンストレージは、シングル磁気記録(SMR)という技術を使って実装されます。SSDの場合には、ゾーンネームスペース(ZNS)という技術を使って実装されます。

ゾーンネームスペース(ZNS)は、ストレージデバイスを異なる特性のゾーンに分けて再構成して、データの配置およびアクセスを最適化するストレージ構造です。ゾーンネームスペースの動作を以下に説明します。

1.ストレージデバイスをゾーン化:

ゾーン作成:ストレージデバイス、特にSSDは、異なる性能または容量特性など、さまざまな属性を持ったゾーンに論理的に分割されます。これらのゾーンはホストシステムまたはストレージコントローラによって管理されます。

シーケンシャルライトオンリーゾーン:多くの場合、ゾーンネームスペースには、シーケンシャルライト動作に最適化されたゾーンがあります。このようなゾーンは、大きいブロックを効率的にシーケンシャルライトできるので、特定の業務での性能を強化します。

2.論理から物理へのマッピング:

データをゾーンにマッピング:ホストシステムまたはストレージコントローラは、受け入れたデータをあらかじめ決められた判定基準に基づいて特定のゾーンにマッピングします。このマッピングでは、データの種類、アクセス頻度、性能要件などの要因を考慮します。

3.ゾーンアウェアネス:

ゾーンアウェアなアプリケーション:アプリケーションやファイルシステムは、「ゾーンアウェア」になるように設計します。その意味は、ゾーン化されたストレージ構造を理解しているということです。アプリケーションやファイルシステムがストレージシステムに働きかけて、ゾーン方式に適合したデータ配置に関する指示を出します。

ZNSをサポートするSSDでは、フラッシュトランスレーションレイヤー(FTL)を実装するのに、大量のDRAMを必要としません。したがって、基板上のDRAMのフットプリントおよびコストを削減できます。ホストにゾーンストレージを実装すれば、ホストやSSDコントローラと、ファイルシステムからデバイスまでをつなぐ、論理から物理へのマッピングに必要な複数の(重複した)レベルの回りくどい処理がなくなるので、システムのソフトウェアとハードウェアが協力してより効率的に動作できます。また、ZNSは、オーバープロビジョニングの必要性を低減し、ライトアンプリフィケーションやQoS変動に関連する問題をなくします。

要するに、ZNSを使えば、従来のSSDの弱点である、規模、QoS、TCO(総所有コスト)の問題に対処できます。ZNS SSDの構造から、次に示すような特性が得られます。

1. ガーベージコレクション – ZNS SSD に必要となるのは最小限

2. オーバープロビジョニング – 実質的に不要

3. ライトアンプリフィケーション – シリアル書き込みにより、1または1に非常に近い値

4. DRAMの削減 – 必要となるのは、受け入れたデータのキャッシングを管理するための最小限

さらに言えば、TLCおよびQLCフラッシュテクノロジーで容量を拡大できますが、SLCフラッシュによる書き込み回数と同じ回数には耐えられません。ZNSは、SLCフラッシュ(高い耐久性)とTLC/QLCフラッシュ(大容量)の両方を効果的に利用した混合テクノロジーによるSSDの可能性を開きます。

フレキシブルデータ配置(FDP)

フレキシブルデータ配置(FDP)は、ゾーンネームスペースと近い関係にあるテクノロジーです。FDPは、最近新しく承認されたNVMe仕様(TP41461)で、ホストソフトウェアおよびドライバに対する修正を簡素化し削減するとともに、ZNSの利点であるデータ配置の最適化を同様に実現することを目指すものです。この新しい規格は、メタ、グーグル、サムスンが協力して推進し、FDP仕様をファストトラックで制定しました。

FDPの主な長所は、レガシーシステムとの後方互換性、およびシステムレベルの最適化に必要な設計リソースの削減です。FDPは、その長所を実現するために、ホストとデバイスの協力のうち最初の80%をデータ配置の改善に利用することを目標としています。ここで、既存ソフトウェアスタックに対して必要とされる変更は、あまり手がかかるものではありません。

FDP対応SSDのデータ配置は、SSDのどこにデータを配置すべきかという「ヒント」をホストに提示してデータセグリゲーションを実施することによって、現在のディスアグリゲーテッドストレージモデルを改善します。FDP対応SSDは、スーパーブロック情報を開示してこれを実現します。ホストは、特定のリクレームユニット(RU)にタグを書き込み、デバイスが複数のアプリケーションから得たデータを整理できるようにします。

このホストとデバイスの協力によって、ライトアンプリフィケーション(WA)、すなわち、ホストからメディアにデータを書き込んだときに生成される副次的なデータを削減できます。また、RUの解放が保証されて、ホストがガーベージコレクション(GC)をガイドできるようになります。

AI分野の明日に向けて開発されたMonTitanを現在サンプル提供中です。

これまでに説明したように、業界をリードするエンタープライズクラスのSSD機能を備えたMonTitanは、明日のAI分野でのストレージニーズに対応するために設計されており、現在、サンプル提供中です。SM8366 – 高性能PCIe Gen5 x4 NVMeエンタープライズSSDコントローラ、およびそのリファレンスデザインキット(RDK)のサンプルをお客様に提供しています。

MonTitan™リファレンスデザインキット(RDK)は、2種類の設定で提供します。従来のNVMeと、市場初のQLCベースPCle Gen5 ゾーンネームスペースSSDです。いずれのRDKも、ターンキーファームウェアのサポート専用に開発され、その消費電力および性能は、SSD平均消費電力25W未満、アイドル時のSSD消費電力5W未満のアプリケーションに最適化されています。

クラス最高の性能、低消費電力、手厚いサポートを備えたMonTitan™は、現在のデータセンターの課題への対応に加えて、新しく登場したHPC、エッジ、AIアプリケーションにも最適です。

将来、あらゆる企業がデジタルトランスフォーメーションプロジェクトに着手すると予想されます。AI/MLアプリケーションは発展し続けて、データに対する需要は必然的に拡大します。この大切な時期に、企業は、性能、容量、コスト、データインテグリティを完璧なバランスで備えた高品質なストレージソリューションを採用する必要があります。そうすることによってのみ、さまざまなAI業務に最適な処理能力を得ることができるのです。