September 14, 2025

何故 USB4 ポータブル SSD は PD 統合が必須なのか?

何故 USB4 ポータブル SSD は PD 統合が必須なのか?
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データ時代の全面到来に伴い、ユーザーのデータ転送速度及び効率に対する要求は嘗てないほど急速に高まっています。USB4 は最新のユニバーサル・シリアル・バス(USB)規格として、理論上最大 40Gbps の転送速度を誇り、高性能ポータブル SSD(PSSD)にとって理想的な選択肢となっています。

しかし、USB4 技術の普及に伴い、ホストメーカー及び ODM/OEM メーカーも新たな設計上の課題に直面しています。その中での核心的な問題に:何故 USB4 対応ポータブル SSD に電力伝送(Power Delivery、PD)機能の統合が必須なのか、という点があります。

USB4 及び USB3.2 の根本的な差異:リンク確立メカニズムの変革

PD が USB4 にとって重要であることを理解するには、先ず USB4 及びその前世代規格 USB3.2 のリンク確立(Link Establishment)における本質的な違いを明確にする必要があります。

USB3.2 の時代においては、ポータブル SSD 及びホスト間の接続は比較的シンプルでした。ユーザーが USB3.2 対応のポータブル SSD を互換性のあるインターフェースに挿入すると、デバイスは標準の USB エニュメレーションプロセスを介して、ホストと通信し、データ転送速度(5Gbps、10Gbps、或いは 20Gbps 等)を交渉し、データリンクを確立します。このプロセスは主にデータチャネルの確立に焦点を当てており、電力供給はより基本的な USB 電源供給仕様に基づいて行われていました。

しかし、USB4 の接続確立プロセスはより複雑であり、極めて重要な「ゲートキーパー」である USB Power Delivery(PD)プロトコルが導入されています。USB4 デバイスがホストに接続されると、両方は直ちに USB4 の高速データリンクを確立する訳ではありません。代わりに、両方は先ず USB-C インターフェースの構成チャネル(Configuration Channel、CC)ラインを介して、PD プロトコル通信を行う必要があります。

このプロセスは「資格認証」と捉えることができます。ホストは PD プロトコルを通じて、ポータブル SSD に対し、身分識別要求を送信し、ポータブル SSD も PD プロトコルを介して、その能力に応答します。両方が互いに USB4 対応デバイスであることを確認し、PD プロトコルによる電力契約(Power Contract)の締結に成功した場合にのみ、ホストは「USB4 モードへの移行」という指令を発します。この時点で初めて、物理層インターフェースは USB4 の高速トンネリングアーキテクチャへと切り替わり、PCIe 及び DisplayPort プロトコルを含むデータパケット伝送が実現され、40Gbps という全潜在性能を発揮できるのです。

要するに、USB4 デバイスにとって、PD プロトコルは高速モードに入る為の「必須」の前段階です。PD なしでは、USB4 を有効化することはできません。

従来型ソリューションの制約:外付け PD がもたらすコスト及び設計上の課題

Silicon Motion の SM2324 が登場する以前は、ポータブル SSD メーカーが USB4 対応製品を開発する際には、マルチチップソリューションを採用せざるを得ませんでした。つまり、これはデータ処理及びフラッシュメモリ管理を担う制御チップに加え、PCB 基板上に独立した PD 制御チップを搭載しなければなりませんでした。

この「制御チップ+外部 PD 制御チップ」構成は OEM/ODM メーカーに少なからず課題をもたらしていました:

  • 部品表(BOM)コストの増加:追加でPDチップを1個搭載することにより、ハードウェア調達コストが増加し、同時に、対応する周辺回路(例えば、水晶発振器、コンデンサ等)も必要となる為、全体のBOMコストが一層押し上げられました。
  • 設計の複雑さ及び製品体積の増加:限られたポータブルSSD内部空間において、チップを1つ追加することはより複雑なPCBレイアウト及び配線を必要とし、研究開発サイクルを延長させることを意味します。同時に、部品点数の増加により、製品の極限の薄型軽量化を困難にし、工業デザインの自由度が制限されてしまうことになります。
  • サプライチェーン管理の複雑化:メーカーは制御チップ及びPD制御チップのサプライヤーから同時に調達する必要があり、サプライチェーン管理と在庫準備の複雑性とリスクが増大します。

これらの要因は USB4 ポータブル SSD の迅速な普及及び商業化の障壁となるには相違ありません。

Silicon Motion SM2324:単一チップ統合ソリューションによる突破口

Silicon Motion は市場の課題及び技術発展の必然的な流れを洞察し、高度に統合された単一チップ USB4 ポータブル SSD 制御チップ「SM2324」を発表しました。従来別途搭載を必要としていた USB PD 制御チップの機能が今やチップ内に完全に内蔵されています。NAND フラッシュメモリ管理、データブリッジング、USB Power Delivery 機能を一体化した SM2324 は真の「オールインワン」ソリューションを実現しました。

次世代の高性能ポータブルストレージ製品の開発に取り組む OEM/ODM メーカーにとって、Silicon Motion の SM2324 の採用がもたらす価値は明白です:

  • より低い製造コスト:SM2324 の単一チップソリューションは外付け PD 制御チップを一切必要とせず、PCB 設計を大幅に簡素化すると共に、部品表(BOM)コストが大幅に削減されることにより、メーカーはより競争力のある価格で市場に参入することが可能になります。
  • より小型化された製品サイズ:高度な統合により、部品点数及び PCB の占有面積が削減され、ポータブル SSD に設計自由度がもっと向上し、より精巧で携帯性に優れた工業デザインを実現し、現代の消費者が求める美観及び携帯性の二重のニーズを満たすことができます。
  • より迅速な市場投入:簡素化されたハードウェア設計及びサプライチェーンにより、開発、テスト、検証のサイクルが短縮されます。メーカーは異なるチップサプライヤー間での調整を行う必要がなくなり、製品開発から最終的な市場投入までの時間を効果的に短縮し、市場での先行優位を迅速に確保できます。

要するに、USB Power Delivery はもはや単なる USB4 ポータブル SSD の一つのオプションのみならず、その全性能を引き出す「鍵」となっているのです。Silicon Motion は革新的な SM2324 制御チップにより、この「鍵」をコアエンジンにシームレスに統合させました。これにより、USB4 接続確立の技術要件を完璧に満たすだけでなく、高度に統合された単一チップソリューションにより、従来の設計が抱えていたコスト、サイズ、開発サイクルといった核心的な障壁を一挙に解消できます。SM2324 の登場はポータブル SSD 産業が USB4 の新時代へと移行する基盤を確固たるものとし、OEM/ODM メーカーに対して、成熟且つ信頼性の高い効率的ソリューションを提供するものです。

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